那覇市首里地域に残る貴重な文化財「さくの川」。この歴史ある場所を、どのように守り、次世代に伝えていくか。2025年6月定例会では、市指定史跡であるこの場所の臨地取得に関する陳情を受けて、市の今後の取り組みについて質問を行いました。
この記事では、その議論の流れを、市民の皆さんにも分かりやすくお伝えします。
「さくの川」ってどんな場所?
「さくの川」とは、那覇市首里にある由緒ある川で、地域の歴史や自然、景観に深く関わる文化的価値の高い場所です。水の流れや周辺の緑、そしてそこに生まれた生活文化は、首里の歴史そのものとも言えます。
だからこそ、市民の方々からは「ここを市として保全すべきだ」という声が多く寄せられ、今回のように陳情という形で議会へ訴えが出されたのです。
陳情に対する市の答弁は?
まず、市民文化部の加治屋部長から次のような説明がありました。
- 陳情第150号は、那覇市の「首里杜まちづくり推進検討チーム会議」にて関係各課で検討中。
- 文化財課としては、さくの川の文化的価値を守る立場から、隣接地の一部取得について地主との面会を予定している。
- 土地全体の取得には、土砂災害警戒区域であることや整備・管理の課題があるため、関係課でさらに協議が必要とのこと。
つまり、市は前向きに取得の可能性を探りつつも、慎重に段階を踏んでいるという状況です。
上里ただし議員からの提案と要望
私はこれまで、「首里杜地区整備基本計画」に沿って、緑と水の保全、そして首里ならではの景観を守るまちづくりを提案してきました。今回の臨地取得も、その延長線上にあると捉えています。
その上で、次のように要望しました。
- この問題は文化財課だけでなく、都市計画や地域整備を担う都市みらい部との連携が不可欠。
- 用地取得後の整備計画や維持管理に関しても、全庁的な協力体制が必要。
- 何よりも、売却の話が出ている今がチャンス。時機を逃さない対応が求められる。
この点について、都市みらい部の花城部長からも「当部としても協力していきたい」と明言があり、
庁内横断的な対応への一歩が踏み出されました。
なぜ今、取得が必要なのか?
一番の理由は、売却の話がすでに地域に出回っていることです。
もし、公共の管理がなされないまま土地が民間に渡ってしまえば、
将来的に開発や景観の損失といったリスクが高まります。
逆に今、那覇市が取得に踏み出すことができれば、
- 文化財としての保存・活用が可能になる
- 市民が訪れ、学び、楽しめる場になる
- 首里全体のまちづくりの価値が高まる
といった多くの効果が期待できます。
市民の声が、まちを動かす
今回の議論の出発点は、市民から寄せられた陳情です。「この場所を残してほしい」「未来の子どもたちに伝えたい」という思いが、市議会を動かし、市の検討へとつながりました。
これこそが、まちづくりの理想的なプロセスです。市民の声が、議員を通じて行政に届き、実際の政策として形になっていく。この流れを、これからも大切にしていきたいと強く感じました。
今後の展望と課題
取得に向けては、次のようなステップが想定されます。
- 地主との面会と意向確認
- 用地の取得にかかる費用の精査と予算確保
- 土砂災害区域に関する技術的検証
- 用地取得後の整備・保全方針の策定
- 市民や地域との協働による活用計画の立案
ひとつひとつ課題を乗り越えながら、**市民の財産としての「さくの川」**を未来につなげるために、これからも行政と連携し、着実に進めていきます。
最後に:文化財の保全は「まちの誇り」をつくる
首里という地域は、那覇市の中でも特に歴史と文化が息づく場所です。「さくの川」のような文化的資産を守り、整備し、次世代に継いでいくことは、単なる景観保護にとどまりません。
それは、私たち市民自身の「誇り」と「アイデンティティ」を育てることにもつながります。
今回の質問を通して、こうした価値を見直すきっかけになれば幸いです。今後とも、現場の声を大切にしながら、持続可能なまちづくりを目指してまいります。
この内容は市民目線から考えるラジオでも配信しています。
ぜひラジオも合わせてご視聴ください。
たーしーなにしてるばぁ~ポッドキャスト(上里ただし)
那覇市議会議員 上里ただし